EOS10D日記その34 ---ksmt.com---10D日誌---ご意見、ご感想などこちらまで---掲示板---email: ---
2009.8.47 シネレンズ入門(33) Kern
Kern, Aarau, SeitzerlandのシネレンズはBolexの8mm, 9.5mm, 16mm映画用カメラのメインレンズであったため、Vade
Mecumを見るよりは、Bolex CollectorのLensesの項目を見た方が良いと思います。他のシネカメラについても、このようにまとめてもらえるとうれしいですね。でも、映画を撮らないくせに駄々をこねるのは筋違いのような気がします。レンズが3本もあれば立派な映画が撮れるじゃないか、と怒られそうな気がします。
2009.8.46 シネレンズ入門(32) Gundlach Ultrastigmat
フランスへ行く前に、もう一度アメリカに戻ります。1916年にUltrastigmat f1.9を製造したGundlach社(ガンドラック?、グンドラッハ?、読み方不明)を忘れてはいけません。
Gundlach社は1884年にニューヨークで設立され、1902年にManhattan Optical社を買収。Koronaカメラや、双眼鏡や、顕微鏡や、ターナー・ライヒの5枚貼り合わせのアナスチグマットなどを製造します。明るいシネレンズは、
Ultrastigmat (1916) f1.9, 40, 50, 75mm
だけだったようです。このレンズはトリプレットの前玉を2枚に分割したErnostar-4型をしていますが、もちろんエルノスターより前に設計されたものなので、Ultrastigmat型と呼ぶのがふさわしいと思います。このレンズが画角が狭いと言われていますが、Gundlachの特許に中には、4枚目のレンズを貼り合わせにした画角80度の広角レンズも含まれていたようです。
ちなみに、Ultrastigmat f1.9/50mmを某有名紀行写真家が入手したそうです。また、ターナー・ライヒの5枚貼り合わせのアナスチグマットは某有名レンズ研究家が入手したそうですので、しばらくGundlachのレンズに注目しましょう。別に持ち主を隠すこともないのですが、どちらもご本人のWebに出るまでは、自粛します。
2009.8.45 シネレンズ入門(31) Schneider
Vade Mecumではシュナイダー社に関する記述が50ページに及びます。全部読むと疲れますので、シネ用のレンズ名だけ書き出すにとどめます。
Cinegon f1.9/6.5mm, f1.8/5.5mm, f1.9/11.5mm,, f2.0/16mm,, f2.0/20mm
Xenon f1.2 9-galss design
Xenon f1.3/25mm 7g/5c
Xeono f1.4/25mm
Xenon f1.5/25mm, 50mm (6-glass Gauss)
Xenon f1.8/10.5mm
Xenon f1.9/16mm
Xenon f2.0/20, 25, 30,35,45,50,60,75,80mm
KinoXenon f1.5/13mm, f1.9/16mm, f1.5/20mm, f1.5/25mm, f2.3/50mm, f2.0/28,35,40,50,75,100,125mm (6g/4c or 6g/5c)
Xenar f2.8/10mm, f2.8/38mm
TeleXenar f3.8/75mm, f3.8/100mm, f4.5/150mm
Xenoplan f1.9/13mm
Xenoplan f2.2/10mm, f1.9/13mm
Kinoplan f2.7/12.5mm, f3.0/25mm
Kiptar f1.6/20mm, f1.6/50mm
とにかく多種多様なレンズを作っていたようです。どのレンズもイメージサークルを守って使う分には開放から良く写ると思います。開放でひどくソフトなのは、うちにあるXenon 1:1,4/90 Eltroくらいのものではないかと思います。このレンズが何者なのかはVade Mecumの中にも見つけられませんでした。
2009.8.44 シネレンズ入門(30) Leitz
Leitzに関する本は他にもたくさん出ていますので、Vade Mecumでは割とあっさりと扱われています。期待したHektor
Rapidに関する記載もほとんどありませんでした。Hektor Rapidの特許にはf2.0とf1.3が記載されており、f1.4/25mmやf1.4/27mmがオークションに出ている、という程度の簡単な説明です。
Leitzには次のようなシネレンズ、あるいはプロジェクターレンズがあります。
cine lens:
Hektor Rapid f1.4/25mm, 27mm
Laicina Vario f1.9 8-64mm zoom
Macro Cinegon f1.8 10mm (7-glass retrofocus)
Optivaron f1.8 6-66mm zoom
Projector lens:
Elmanon f2.8 35-250mm
Colorplan f2.5 90mm
Hektor f2.8 250-300mm
Hektor f2.5 200mm
Epis f3.6/325mm, f4.0/400mm
Scriptor f4.0/300-340mm
昨年まではライツのシネレンズに注目する人はおらず、激安の掘り出し物がちらほらありました。今年はマイクロ・フォーサーズのせいで、Cマウントレンズが高騰しており、冷静な対応が必要です。しかし、今まで見ることができなかったCマウントのレンズが店頭に並ぶようになったという点においては、良かったとも言えます。
2009.8.43 シネレンズ入門(29) Askania
中将姫光学にAskania Kino-Anastigmat 50mmF1.8というのがありまして、戦前の有名なシネレンズのようなのですが、何だか分かりませんでした。Vade
MecumのAskaniaが出ていますので、要約します。
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戦前のアスカニアは映画用のカメラ Askania Z で大成功を収めた。Askania ZはK.Vassの"The
triumph of the Will" や L. Riefenstahlの"Olympic 1936"などで使われた。また、映画用のミラーレンズでも有名で、75mm,
200mm, 250mm, 500mm, 600mmなどがある。特筆すべきは、現代のレンズメーカーが不可能であると言っている絞りがミラーレンズに付いていることである。
アスカニアは戦後も活動を続け、ライカ用の32in望遠レンズや、天体望遠鏡用のミラーレンズなどを製作した。
Askania Kino f1.8 75mm for 35mm movie
Theodolite f4.5 24in(600mm)
1993-4年に撮影された"The Olympic Summer"という映画ではAskania
Zカメラと7本のAskaniaレンズが使われた。しかし、Askaniaは本当のレンズメーカーではなく、これらのレンズは製造委託されたものだ、との説が有力。
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その製造委託先が知りたかったのですが、Vade Mecumでも不明です。アスカニアのシネカメラはレンズ付きで売りに出ることがあるのですが、結構高いので手が出ません。やはりこれも”中将級”コースですね。ところで先日、Kinoplasmat亀吉さん所有の絞りのついたミラーレンズ(Cマウント)を見せてもらいました。反射望遠の絞りの動きを初めて見ました。リングの幅が変わる様子が良く分かりました。スチル写真だとシャッタースピードが自由に設定できるので反射望遠に絞りはいらないと思いますが、シャッタースピードが不自由な映画の場合は絞りが必要ですね。もちろん現代のレンズメーカーが反射望遠用の絞りを作れないわけはなく、ただ必要性がないだけだと思います。
2009.8.42 シネレンズ入門(28) Astro
Astro社についてVade Mecumから引用します。Astro社のレンズについては、こちらに詳しく出ています。
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Astroは1925年ごろ設立されたシネレンズとテレビレンズの大メーカーであり、後に小型スチルカメラの分野に進出。Exaktaマウントとライカ用Idenscopマウントのレンズ以外は、必要に応じてカメラマウントが作られたようだ。次のようなレンズがある。(明るい順に並べ替えました)
Tachon f0.95 25-75mm
Tachnar f1.0 25, 35, 40, 50, 75mm
Tachon f1.2
Astro-Kino f1.2
R.K. Cine f1.25
無銘 f1.25/85mm
Kino f1.4/18mm 6-glass Gauss type
Tachar f1.5
Astro Kino-Color f1.4-f1.8 50-100mm
Tacharette f1.5, f1.8
TV-Tachar f1.5-f2.0 25-150mm
Kino f1.6 50mm
PanTachar f1.8 25, 28, 50, 75, 150mm
Tachar f1.8
Pictorial Tachar f1.8
Television Tachar f1.9 40-240m
Gauss Tachar f2.0
無銘 f2.0/200mm
Rosher Soft Focus f2.3 75, 100mm (Roshar-Kino-Portraitのこと)
Soft Focus f2.3 25-100mm
PanTachat f2.3
Tachar f2.3
PanTachar f2.7
無銘 f2.7/400mm
Ostar f3.5/5in
無銘 f3.5/800mm
Telestigmar f3.5-f6.3 f71-315mm
Telastan f3.5-f10 200mm-2000mm
FernBildLinsen f5.0-f6.3 75-1000mm
ApoTelastan f5.6-f11 300mm-2000mm
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私は、Gauss TacharとRoshar-Kino-Portraitが気に入っています。Vade MecumではRosher
Soft Focusとなっていますが、画面中心がシャープなペッツバールレンズです。意図的に像面を内側に湾曲させています。昔の大判用の300mmくらいのペッツバール型レンズを35mm映画に使うとシャープすぎて、面白くも何ともありません。また焦点距離が長すぎます。そこで短い焦点距離のペッツバールレンズの像面を無理に湾曲させて、大昔のダゲレオタイプの肖像写真のような雰囲気を出したのだと思います。
2009.8.41 シネレンズ入門(27) Hugo Meyer
Hugo Meyer社のシネレンズといえば、今最も人気の高いKino Plasmatがあります。他にもMakro
Plasmat, Miniature Plasmat, Satz Plasmat, Doppel Plasmatなど、パウル・ルドルフ博士の設計したプラズマットが高い人気を保っています。Vade
MecumではPlasmatについて次のような記載があります。(図もVade Mecumから引用)
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ルドルフ博士のPlasmatという名前は最初3群4枚のレンズに付けられたようだ。ルドルフ博士は被写界深度が深いと主張しているが、ショッケの意見では、残存色収差が大きいとのことである。
最初のPlasmat
これはルドルフ博士が1890年に設計したAnastigmatを分離したものである。
ZeissのAnastigmat
この型にPlasmatはMeyerでは作られていないし、通常Plasmatと呼ばれるものではない。
ルドルフ博士は最初Plasmatを設計して古巣であるツアイスに持ち込んで少し製造されたが、すぐに中止になった。PlasmatはHugo
Meyerにライセンスされ、1922年から製造が始まった。ただ、Hugo Meyerに独占権を渡したわけではなく、他のメーカーでもライセンス生産させる権利をルドルフが保留したようである。この点をツアイスが嫌ったと言われている。実際、PlasmatはSutar社でもライセンス生産している。初期においてはPlasmatはHugo
Meyerの独占販売ではなかったようである。
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最初のPlasmatはMakro Plasmatの内側だけのようにも見えます。
Makro Plasmat
Hugo Meyerのシネレンズは次のようなものが記載されています。
Kino Plasmat f1.5, f2.0
Primoplan f1.5/25mm
Makro Plasmat f2.7
Trioplan f2.5, f2.8
TeleMegor f4, f5.5
Kinon Superior f1.6 (projection)
Wide Angle Plasmat f1.5/0.75in (projection)
2009.8.40 シネレンズ入門(26) Goerz
charlie944さんからBausch&LombのBaltar f2/50mmにそっくりの外観を持つGoerz
Apogorがある、との情報を頂きましたので、Goerzのシネレンズについて少し調べてみました。Vade
Mecumには次のようなレンズが記載されています。
----- 戦前のC.P.Goerz A.G Berlin ------
Cinegor f1.2/25mm, f1.5/25mm, f2.0-f2.5/50-100mm
Projection Hypar f3.5/40-210mm (Triplet)
Kino Hypar f3.5/35, 40, 42, 50, 55, 75, 100mm (Triplet)
Kino Hypar f3.0/55mm
シネレンズではありませんが、Photometon f2.0/3inという、”セルフ・ポートレート・ブース”用のErnostar-4型のレンズがあるそうです。戦前のドイツにもプリクラみたいなのがあったようです。C.P.
Goerzの3インチレンズ中では、一番明るいと思います。Cinegor f2.0、f2.5の型は書かれていませんが、Photometonと同じだったかもしれません。
----- C.P. Goerz Vienna Austria -----
Hilgor f2.0/25mm on Goerz Minicord
----- C.P. Goerz America N.Y. -----
Hypar f2.7, f3.0, 15-100mm for cine
Hypar f3.5
Apogor f2.3, 50mm, 75mm, etc. 型不明
CinegorやApogorは、なかなか魅力的な名前です。
2009.8.39 シネレンズ入門(25) Bell&Howell
Bell&Howellについて、Vade Mecumから要約します。
主にアメリカで16mm用のFilmoや35mm用のEymoカメラを製造したが、テーラー・ホブソン社の協力を得てレンズの製造も行った。1920年代にはテーラー・ホブソン銘のレンズを輸入した。1931年代になると"THC"あるいは無銘のレンズに代わったが、中身はテーラー・ホブソンのものと同じであると宣伝しているものもある。
Super Comat f1.9 10, 12.5, 16, 20, 25, 37.5mm
Super Comat f2.3/10mm
Super Comat f2.5/15mm
Mytal f2.5/12.5mm
Telate Type V f3.5/50mm, f4.5/76.2mm
Eymax f4.5/6in, 254mm
Miltar f2.0/25mm, f3.5/150mm
Lumax (Ernostar-4 type)
Mirrot System f10
Filmovera f1.5/50mm (Zoom ?)
Filmovera f1.5 15-20mm zoom
Ansix f2.5/25mm, f3.5/35mm
Anon(無銘) f1.3, f1.5(Kinic?)
Anonと書いてあるのは、レンズ名ではなくAnonymous(匿名の、無銘)という意味だと思います。各社にAnonが登場しますので間違いないと思いますが、まぎらわしいです。せめて"Anon."と点を打ってほしいものです。
機動性を重視した小さいレンズが多いですね。中身はTTH製と同じだと思いますので良く写ると思います。
2009.8.38 シネレンズ入門(24) Kodak
Vade MecumからKodak Cine Lensesの項目を要約します。
Kodakは1920年代から1930年代にかけて16mmフィルムを市場に投入し、シネカメラの大きな市場を開拓した。KodakのレンズはKodakのフィルムに合わせて開発された。Kodak
f1.9は安くて優秀なレンズで、成長著しいコダカラープロセスに特に適していた。
16mmフィルムは10x7.5mmと小さなフォーマットであったため、35mmフィルムに比べ非常に安価であった。1フィートに40コマも写せるし、リバーサルフィルムなのでプリントする必要がないし、セルロース・アセテートであったため燃えにくかった。
Kodak f6.5
Kodak Anastigmat f3.5
Cine Ektar f1.9/25mm Ernostar-4説と、キングズレークのペッツバール改良型4群4枚説がある。
Long Focus f4.5
Cine Ektar f2.0/63mm
Fluoro Ektar f1.5/50mm 7g/4c, 1+2+1+3
Kdak Anastigmat f2.7, f3.5, f4.5/1.5in
Kodak Anastigmat f1.9/12.5mm, 25mm
Ektar f2.7/15mm, f1.9/25mm, f3.5/2in, f2.7/63mm, f4.5/3in, f2.7/102mm,
f4.5/4.5in, f4.5/152mm
Kodak Cine f2.5/15mm, f1.9/25mm
Cine Ektar f1.4/25mm 7g/4c AeroEktar type
Cine Ektar f1.6/40mm f1.9/16mm, f1.9/25mm, f2.5/15mm
Kodak Cine f1.9/50mm
Cine Ektanon f2.7/13mm, f1.9/13mm, f1.6/50mm
似たような名前のがいっぱいあってややこしいです。同じスペックでも時代によって設計が違うかもしれません。やはり、ペッツバール改良型のF1.9/25mmと、AeroEktar型のf1.4/25mmが面白そうです。そういえば、中将姫光学さんのところにKodak Cine Anastigmat f1.6/50mmの作例があり、ペッツバール改良型のように見えました。これも中将級コースですね。
2009.8.37 シネレンズ入門(23) Bausch&Lomb
1849年にボッシュ氏がアメリカに移民します。最初は輸入眼鏡の販売をしますが、失敗してします。そこでロム氏がお金を出して、製造業に乗り出し、見事成功をおさめます。1891年にツアイスの双眼鏡とアナスチグマットレンズのライセンス生産を開始します。第一次世界大戦でドイツからのガラスの輸入が止まると、1915年から自社でガラスの製造をはじめます。現在ではコンタクトレンズが主力商品のようです。
Vade Mecumには次のようなシネレンズが記載されています。
Tessar f3.5 32-75mm
Raytar f2.3-f2.7 35-152mm
Raytar f1.5 (1+1+3型), f2.5/50mm
Ansix f1.9/25mm (6-glass Gauss)
Super Cinephor f1.5 150mm (X-ray)
Anastigmat f2.0/3in (1938)
B&L E.F. Anastigmat f2.0/75mm (6-glass Gauss)
Baltar f2.3 25,30,35,40,50,75,100mm (6g/4c)
Super Baltar T3.0/20mm
Baltar T2.3 25, 35, 50, 75, 100mm
Baltar f2.7/152mm
Baltar f2.0/50mm
Animar a / plasmat layout
Animar b / 6-Glass Gaus layout
Animar c / retrofocus
Animar d / triplet f2.7-f2.8 12-25mm
Animar e / Aviar f1.9 14-26mm
Animar f / Ernostar-4 type f3.5 75-100mm
Baltarは最近人気があります。Animarにたくさん種類があるのは知りませんでした。Anastigmat
f2/3inは初めて聞きましたが、なかなか面白そうですね。
2009.8.36 シネレンズ入門(22) Wollensak
興業用、軍事用、個人用などを分野を問わず、アメリカが圧倒的に多くの映画を制作し、撮影機材を消費していると思います。特に16mm映画はアメリカとコダックのためにあったような気がします。まあ、これはスチル写真でも同じでして、ほとんどのカメラとレンズはアメリカに輸出するために作られた、と言ってもよいと思います。
それにもかかわらず、アメリカの会社はあまり熱心にレンズを作っているとは思えません。レンズは1セットあれば映画を100本でも200本でも作れるわけだから儲からない。そんなものはイギリスやドイツにまかせておけ。アメリカはたんまり儲かるフィルムを作るのだ、ということかもしれません。
とはいえ、アメリカでも量的にはたくさんのシネレンズが作られたと思われます。Vade
MecumからWollensakのシネレンズを拾い出してみます。
1919-1940
Cine Velostigmat f1.5/25mm, f1.5/50mm, f1.9/12mm, f2.7/12mm, f2.7/25mm,
f3.5/12mm, f3.5/25mm, f5/??mm
Cine Telephoto's f3.5, f4.5 1-6in
Velostigmat for cine f2.8 35mm
戦後
8mmシネ用
f1.5/38mm
f1.9/13mm
f1.8/6.5mm, 9mm
f2.3/6.5mm, 9mm
f2.5/25mm, 38mm
f2.8/38mm
f3.5/38mm
16mmシネ用
High Speed Cine Raptar f1.5/12.7mm, 25mm, 40mm, 51mm
Cine Raptar f1.9/25mm, 51mm
Cine Raptar f2.5-f3.5, 9, 12.5, 13, 17, 25, 38, 76, 100mm(f4.5)
Cine Velostigmat f1.9-f5.0, 13mm-50mm
Wide Angle Raptar f2.7, f2.5 17mm
Telephoto f2.5-f4.5/51mm-152mm
Cine-Velostigmat f4.5/150mm
うちにはFastax用のRaptar f2.7/152mmはテッサー型で非常によく写ります。どれも堅実な設計で良く写ると思われますが、ちょっと実用的すぎるかなぁ、と思います。
2009.8.35 シネレンズ入門(21) Wray
謎のレンズメーカー(7) Wray 2とカブるのですが、Vade MecumからWrayのシネレンズを抜粋します。
Cine Lustrar f1.5
20mm, 1in, 2in 1934年のB.J.AにPathe Moto-cameraに取り付けられたものが出ている。
Cine Lustrar f2.5
1, 1.5 2in 1930年代。
Cine Rediography f0.71
50, 64mm B.J.A 1962に掲載。ペッツバール改良型7枚レンズ。肺結核X線撮影用。
Cine Radiography f1.4
100mm B.J.A 1962に掲載。X線撮影用。
Cine Unilite f1.9
25, 35, 50, 70, 100mmが戦後製造された。焦点距離の短いものは一般的。プロフェッシオナル映画用。
Cine Unilite f2.0
35mm。戦後。何個作られたかは不明。Ilford/Kennedyのレコーディングカメラなどに使われた。
Tricolor Lens f2.0
35, 50, 75, 100mm 三色分解カラー映画は、アメリカのテクニカラー、日本のコニカラー以外にも、イギリスにトリカラーというのがあったのだそうです。テーラーホブソンが戦前にテクニカラーにレンズを供給したように、戦後Wrayがトリカラーにレンズを供給しました。レンズとしてはCine
Uniliteですが、このカメラにも厚い分光プリズムが使われているようですので、35mmはレトロフォーカス型であったと思われます。
中将姫光学さんがCine-Unilite f2/35mmを使った作例を発表されています。それ以外で作例を見たことはありません。このことからWrayのシネレンズは入門コースではなく、”中将級”コースであるとする説も。
2009.8.34 シネレンズ入門(20) Ross XPRES f2.9/f2.75
ROSS XPRES f2.9はダイナー型だと勝手に思っていたのですが、Vade Mecumを見ると、1+1+i+3のXPRES型だそうです。戦後の物は1+1+i+2のテッサー型が多いようです。1927年のB.J.Aでは前年に出たXPRES
f3.5の増強版として掲載されています。XPRES f3.5とf2.9は1932年頃Ensign Multexや,
Ensign Special Reflexや, RoBoTカメラ用に供給されたと書いてあります。次のような焦点距離が出ています。
1in 25mm 16x12mm
2in 50mm 1x0.75in
2.5in 62mm 1x0.75in
3in 75mm 2.6x1.75in = V.P.K
5.6in 144mm up to 4.25x3.25in(1/4pl)
6.5in 165mm up to 5x4in
8.5in 215mm up to 6.5x4.75in
10in 254mm 6.5x4.75in
ここまでは、まあどうということはないのですが、この後にXPES f2.75/3.5inの写真が出ています。XPRES
f2.75が映画用のプロトタイプとして存在するようなのです。
2009.8.33 シネレンズ入門(19) Ross XPRES f1.9
ROSS XPRES f1.9は数が少なくて、人気があるのか、それとも人気がないのか良く分かりません。値段も安かったり、高かったり。今のところ中将姫光学さんのf1.9/50mmと、れんずまにあさんのf1.9/53mmと、うちのf1.9/75mmしか知りません。50mmと75mmの比較では、良く似た写りであることが確認できています。名前とスペックが良く似たものに、有名なROSS
XTRALUX f2.0/50mmがあります。こちらも希少なレンズですが、kinoplasmat亀吉さんの作例を見ると、さすがに戦後のレンズだけあって、XPRES f1.9よりははるかにシャープに写るようです。
まあ、ROSS XPRES f1.9は気長に探せば、いつかは安いのが見つかると思います。Vade MecumにはROSS XPRES f1.9について次のような記載があります。
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1929年にガウス型6枚玉の英国特許No323,138を取得。非常に左右対称なレイアウト。1930年のB.J.Aの広告では映画用のレンズとして紹介されている。
1.0in 25mm 16x12mm 16mm映画用?
1.5in 38mm 1x0.75in (25x18mm 35mm映画用?、実際には24x36mmをカバー?)
2.0in 50mm 1x0.75in (25x18mm 35mm映画用?、実際には24x36mmをカバー?)
3.0in 75mm 2.62x1.75in=V.P.K
このほかに、f1.9/5inが1945年頃35mm映画用に製造された。
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XPRES f1.9を聞いたことがあるだけで入門終了。一個買えれば上級者、二個買えれば世界的なコレクターという感じですね。
2009.8.32 シネレンズ入門(18) Dallmeyer f1.9 (2)
戦後になりますと、Dallmeyerのシネ用のf1.9はさらに増えます。なぜ中途半端なf1.9なのかわかりません。ひょっとしたらハリウッドで主流のTTHのシネレンズがf2.0なので、それに負けじとf1.9にしたのかもしれませんね。Vade
Mecumには次のようなレンズが記載されています。
Rareac f1.9/ 20, 25, 38, 51, 80, 102mm - Super Sixのガラスを変えたバージョンのようですが、数が少なく高価です。
Sixtac f1.9/25mm - Septac f1.5/50mm, Octac f1.5/80mm, 1.5/100mmなどと同じ名前の付け方ですね。安直な名前のような気もしますが、これらをセットで持っているとポーカーのストレートのようで、何だか強そうです。
Cine f1.9/13mm - D マウントだとF1.9はごく普通ですね。
Cine Long Focus f1.9/75mm - これは初めて知りました。見たことありません。
2009.8.31 シネレンズ入門(17) Dallmeyer Ultrac f0.98/25mm
戦後に作られたUltrac f0.98/25mmはVade Mecumに型が記載されていますので図"Da
026"を引用します。普通の4群6枚のダブルガウスの前後に一枚ずつ単レンズを追加した6群8枚です。このレンズが去年売りに出ているのを見たことがあるのですが、今は出ていないようです。去年はまだ安かったのですが、今度出たら高いかもしれませんね。
2009.8.30 シネレンズ入門(16) Dallmeyer f0.99/25mm
1930年の時点では最も明るいレンズだったようです。kinoplasmat亀吉さんサイト”滲みレンズ”に作例や広告や新製品記事など現在入手可能なすべての情報が出ています。他にはほとんど情報がありません。
Cマウントレンズの人気が上がってしまった今日では入手困難であり(kinoplasmat亀吉さんのレンズ以外に見たことがない)、”シネレンズ入門”として取り上げるのはどうかと思ったのですが、一応基礎知識として知っておいた方がいいかなぁ、と思います。
2009.8.29 シネレンズ入門(15) Dallmeyer f1.9
Dallmeyerのシネレンズの中で最も興味深いのがf1.9です。Vade Mecumを見るとDallmeyerのf1.9には次のような種類があるようです。
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(1) Dallmeyer f1.9 - Petzval型か?
1914年のリストにあるようですので、Petzval型ではないかと推測されますが、はっきりしないようです。Petzval型のf1.1がこれ以前に存在するそうです。他にf1.9が可能な型は、Opic(1920), Kino Plasmat(1922), Ernostar(1924)がありますが、いずれも1914年には存在しなかったと考えられます。
(2) Dallmeyer Cinematograph/Kinematograph f1.9 - 型混在か?
1914年に既に存在し、1961年のB.J.Aでもまだ出ているようです。ちなみにうちにあるKinematographはF5.6くらいのADON型でした。多分Cinematographというのは、単に映画用をいう意味で、各種の型が混在していたのだと思います。
(3) Dallmeyer f1.9 - Kino Plasmat型
これはCheckieさんが一本持っています。私も以前お借りしたことがあるのですが、明らかにKino
Plasmat f2でした。1926年のEymoやFilmoの取り付けられていたようです。
(4) Dallmeyer Super Six f1.9 - ダブルガウス型
有名なSuper Sixです。
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ということで、1910年代のDallmeyer f1.9がいったい何型だったのか大いに興味をそそります。では、製造番号が何番だったら1910年代なのか? というのがはっきりしません。9万番台なら多分1910年代だと思います。10万番台のごく若い番号(例えば10万3千番以下)でもひょっとしたら1910年代かもしれません。
いずれにしても高価なレンズばかりですので、調査はいっこうに進みません。もしDallmeyer
f1.9かCinematograph f1.9をお持ちの方がおられましたら、何型か教えて見ただけると助かります。
後玉がはずせれば、簡単に何型か見分けられます。
(1) Petzvalだと前玉が1群なので、明るい反射が2個しかありません。前玉が2群で明るい反射が4個あれば、Kino
PlasmatかSuper Sixです。
(2)前玉が2群で、後玉の絞り側のレンズが凸ならKino Plasmatで凹ならSuper Sixです。
常識的にはこれで判別できるのですが、細かく言うと、次のような可能性も少しあります。
(3)Super Sixだと思ったらErnostarだったという可能性はあります。この場合は第3群を調べる必要があり、両凹レンズならErnostar,
貼り合わせのメニスカスならSuper Sixということになります。
(4)可能性は低いのですが、Kino Plasmatだと思ったら、実はPetzval改良型だったということがあるかもしれません。(2)の条件だと、Petzvalの前に1枚追加した型と区別がつきません。
Petzval型とErnostar型のDallmeyer f1.9は存在する可能性が高いと思うのですが、私はまだ見たことも聞いたこともありません。もし見つかれば、かなり自慢できると思います。
2009.8.28 シネレンズ入門(14) Dallmeyer Speed Anastigmat
Vade MecumにDallmeyer Speed Anastigmat f1.5について次のような記述がありましたので、要約します。
Speed Anastigmat f1.5---------------------
0.6-3.0inchまで6種の焦点距離。すべて16mm映画用。
(a) 1928年のB.J.A(British Journal (of Photography) Almanac)に出ているので、1928年には既にあった。
(b) 1932年のB.J.Aには20mm, 1in, 2in, 2.5in, 3inが出ている。CoxはSeptac型ではなくKino
Plasmatと関係すると言っている。一部はトリプレットかもしれない。3inchでも16mm映画しかカバーしない。
(c) 良く補正されたフラットな像面であり、コーティングされたレンズが戦後まで長期にわたって売られた。
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うちにあるSpeed Anastigmat f1.5/3inchはKino Plasmat型です。Webに発表されている作例を見ると、多分ほとんどのSpeed
AnastigmatがKino Plasmat型だと思われますが、Vade Mecumの筆者はどうしても認めたくないようです。Kino
Plasmatはドイツのパウル・ルドルフが開発したと言われていますので、イギリスのDallmeyerがそれを使ったとは言いたくないのだと思います。Septacやトリプレットはイギリスで開発されたものなので、無理やりそっちにしたいようです。面白いですね。Cox氏もイギリス人なのに、何でドイツの肩をもつのだ、というようにも読めます。
ただし、(c)の記述を見ると、戦後のものはSeptac型などの他の型であった可能性もあります。このレンズに関しては、まだほとんど研究おらず、これから色々な新発見があると思います。
Speed Anastigmat 3inchは、Kino Plasmatと同じですから、余裕で24mmx36mmの画面をカバーします。確かにオリジナルのCマウントでは穴が小さいので16mmしかカバーしませんが、Nikon
Fなどのマウントに改造すれば、全く問題ありません。Vade MecumはB.J.Aの広告などの古い文献に基づいて書かれており、実写での確認は行われていないようです。もちろん、だからといって、この本の価値が下がるわけではありません。レンズを分解し、実写テストを行い、Vade
Mecumの間違いを訂正していくのが、我々読者に与えられた使命ではないかと思います。まあ、一生かかっても無理だと思います。千五百円で一生遊べる本なわけですから、コストパフォーマンスは高いです。
2009.8.27 シネレンズ入門(13) Cooke Kinetal
Vade MecumでCooke Kinetalを調べたところ、次のようなレンズが記載されていました。
戦後の16mm映画用
Kinetal f1.85/9mm 9g/7c
Kinetal f1.8/12.5mm 9g/7c
Kinetal f1.8/17.5mm 9g/7c
Kinetal f1.8 25mm 6g/4c
Kinetal f1.8 37.5mm 6g/4c
Kinetal f1.8/50mm 6g/4c
Kinetal f2.6/75mm 5g/4c
Kinetal f2.6/100mm 5g/4c
Kinetal f3.8/150mm 5g/4c
8mm映画用
Kinetal f1.8/12.5mm
ここで、9g/7cとは、9 glasses and 7 componentsのことで、7群9枚のことです。群とは貼り合わなどでグループ化されたレンズ群のことを言いますが、必ずしも貼り合わせとは限らないようです。
1+1+i+2というようなレンズ型の表記も使われます。これは、単レンズ+単レンズ+絞り+2枚貼り合わせ、という意味でして、テッサーなどがこれに相当します。絞り位置を"i"で明示できるので便利です。どうせなら、1-1+i+2、の方が2枚目が凹レンズであることが明示できていいと思うのですが、こんな書き方があるのかどうかは分かりません。
2009.8.26 シネレンズ入門(12) Cooke Kinic 2
終戦直後のKinic f1.5/25mmはペッツバール改良型だそうです。普通のペッツバールの前にメニスカスを一枚入れています。短焦点のKinicの中では、これが一番面白そうです。
Cooke f1.5/90mmというのもKinicではないかとかいてありますが、Kinicにいろんな型があるので意味不明。これはどう考えてもバカでかいレンズですね。もしあれば是非欲しいです。
2009.8.25 シネレンズ入門(11) Cooke Ivotal
Vade Mecumによりますと、Cooke Ivotalは戦後の映画用レンズだそうです。8mm映画用から24x36mm映画用まで、f1.4からf2.5まで、色々あるようようです。
Ivotal f1.4/12.5mm 8mm映画用 Opic型
Ivotal f1.4/25mm 16mm映画用 Opic型
Ivotal f1.4/2in 4群4枚(多分エルノスター型)
Ivotal f1.4/50-75mm 35mm映画用 型不明
Ivotal f1.8/20-50mm 35mm映画用 型不明
Ivotal f1.8/70mm 24x36mm映画用 詳細不明
Ivotal f2.5 18mm 詳細不明
Ivotal f1.4の12,5mmと25mmは4群6枚のOPIC型だそうです。私としてはf1.4/75mmがあれば欲しいです。
2009.8.24 シネレンズ入門(10) Cooke Series I/Kinic
Vade MecumでCooke Kinicのことを調べていたら、戦前にf2.5-f3.5のKinicはCooke
Triplet Series I f3.1と同じもののようです。ただし、戦後のKinic f1.4-f1.9とは違います。Kinic銘はただ映画用という意味でつかわれているようで、混乱します。Cooke
Series Iの項目にとKinicの項目ついて要約します。
ちなみに、ドイツではローマ数字を I, II, III, IV, V, VIと書きますが、イギリスでは1,
11, 111, 1V, V, V1と書くようです。ややこしです。Cooke Series 11aが壱拾壱aか弐aか悩んでいたのですが、どうやら弐aだったようです。
Cooke Series 1-----------------------
Series 1には全く異なるふたつのタイプがある。古い方はダゴール型の3枚貼り合わせの対象型アナスチグマットである。f6.6コンバーチブル8inの場合には、前が14inで後ろが20inであった。
新しい方は後にKinicにも使われたトリプレット型である。これには2つのバージョンがある。
(a)映画用のf3.1 "Special Lens"が1921年のB.J.Aに掲載されているのは、1.625in, 2in, 2.25in, 3in, 3.5in, 4in, 5inである。f3.5のものもある。
(b)Portrait Series 1 f3.1 8.25in, n10.5in, 12.5in。大きなポートレート用のトリプレットで、ソフト加減調節可能。
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Kinic-------------------------------
戦前のKinicにはf3.5/20mm, f3.5/23mm, f3.5/25mm, f3.5/50mm, f2.8/25mm, f2.7/25mm,
f2.5/23mm, f2.5/47mm f3.0/50mmなどがある。16mmシネ用と35mmシネ用がある。
戦後は35mm映画用レンズにはPanchro銘が使われ、16mm映画用レンズにはKinic銘が使われた模様。Kinicにはf1.9,
f1.5, f1.4などがある。
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2009.8.23 シネレンズ入門(9) Cooke Technicolor 2
Veda MecumにCooke Technicolorに関する記載がありましたので、要約します。
Technicolor-------------------
最初期の商業映画向けカラープロセス。第二次世界大戦の前後に主流だった。2色分割時代には、TTH社は25,
35, 40, 50, 70, 100, 140mmを供給した。1932年に3色分解になると、特殊な25mmと35mmレンズが追加された。フィルムの前に厚いプリズムがあるので、レトロフォーカス型のレンズが開発された。このレンズはテクニカラー社が保有し必要に応じて映画会社に貸し出したため、ほとんど市場には出ていない。
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Vade Mecumの記載が正しいのかどうか、私には分かりません。2色分割時代でも、やはり厚いプリズムが入りますので、プリズムの構造によって必要なバックフォーカスが変わるのかもしれません。もし変わらないとすれば、レトロフォーカスでない25mmと35mmが存在したとは思えません。25mmのレトロフォーカス型があったというのは聞いたことがありません。35mmと40mmのレトロフォーカス型はうちにあったのですが、どうやら同じレンズのようでして、5mmの差が良く分かりませんでした。75mmもWeb上で見たことがあります。
まあ、いずれにしても、テクニカラー用のレンズは、全く人気がありません。多分一焦点あたり20本くらいしか製造されておらず、流通しているのは数本だと思われますので、大変レアなのですが、人気がありません。多分、詳しいカメラ屋さんがいないせいだと思います。私が40mmを買ったカメラ屋さんは、開放ではソフトで、絞るに従ってシャープになるという説明でした。しかし、実際に使ってみると、開放では非常にシャープで、絞るに従って画質が低下するという傾向を示しました。全く逆ですね。
これくらい変わったレンズになると、シネレンズ入門という題にはそぐわないと言えます。しかし、入門した人は多分私以外には誰もいないので、入門したその日からその筋の権威になれる、とも言えます。ここはひとつ、入門されてはいかがでしょう?
2009.8.22 レントゲンレンズ
レントゲンレンズには非常に明るいものがあります。たとえば、先日山形さんに見せてもらったR-Biotar f0.85/55mmはその代表格です。中心は非常にシャープですが、イメージサークルは35mmフィルムをカバーしません。こんな小さなレントゲン写真を何の目的で使ったのか不思議なので、ちょっと調べてみました。私が想像するレントゲン写真は、胸部であればA3くらいの大きなものですので、どう考えても500mmくらいのレンズが必要な気がします。
Vade Mecumにある、Taylor HobsonのRadiographyの項目を要約すると、つぎのようになります。
高速でシャープなレントゲンレンズは患者の負担を減らす。第二次世界大戦において、兵員輸送時の肺結核感染を防止する必要が生じた。TTH社はこれに目を付けて、次のようなレントゲンレンズを開発した。
(a) f1.5/6in for 70mm film 6:1または8:1縮小撮影
(b) f1.0/2.25in for 18x24mm 16:1縮小撮影
(c) f0.8/2in for 16mm cine film
毎日徴兵検査にやってくる大勢の兵隊全員の胸部X線撮影をして肺結核かどうかチェックするには、大きなシートフィルムを使う余裕はなく、小さな映画用のロールフィルムを使うしかなかったのでしょう。今のように小さな病変を見つけて早期治療するのが目的ではなく、戦地で感染を引き起こす重症肺結核患者を軍隊から排除するのが目的だったようです。どうやら戦争中のレントゲンレンズは悲しい運命を背負っているようですね。歩兵や騎士が大陸を進軍した時代はまだましだったのでしょうが、狭い輸送船の船倉やトラックの荷台で、密集した状態で兵員輸送を行う場合には大問題なったものと思われます。
2009.8.21 SIGMA-XQ 1:4 200mm
SIGMA-XQ MULTI-COATED 1:4 f=200mm Σ-701479 LENS MADE IN JAPAN
Hektor 1.9/73mmの前玉繰り出しの記事を書いたら、シャドーさんが昔シグマやマキノンに前玉を繰り出すマクロリングが付いたレンズがあるとの情報を頂きました。そうしたら、山形さんが早速SIGMA-XQ
1:4 f=200mmを持ってきてくれました。ありがとうございました。このレンズをググっても全くヒットしません。かなりめずらしいレンズのようです。
きれいです。ほとんど未使用。
これが無限遠の状態。
ヘリコイドを繰り出すと3mまで近づけます。このとき、画面の縦方向が1'1"(33cm),
画面の横方向が1'8"(50cm)(倍率で言うと約1/14倍)くらいだと印刷してあります。そうすると、REPRODUCTION
RATIOと緑の字で書かれたリングが現れます。
これを右に回すと前玉が繰り出され、1/8倍, 1/6倍, 1/5倍, 1/4倍, 1/3倍とマクロモードになります。前玉をいっぱいに繰り出すと、最短約80cm(1/3倍)まで近づけます。前玉を繰り出すと、どんどんソフトになります。とにかく、9mより手前ではソフトフォーカスレンズのようです。何か近接補正とは逆のことをやっているようで、設計意図は不明です。今までレンズの取扱説明書を読んだことはありませんが、このレンズだけは説明書を見てみたいものです。前玉を繰り出した状態で、ピントリングを回してレンズを縮めると、前玉も一緒に縮みます。無限遠ではソフトにすることは全くできません。近接するに従って、ソフト加減が調節できるようになり、3mから手前はどんどんソフトになります。
マウントはTマウント。連動絞り機構は無し。シグマでは、マニュアル絞りで、Tマウントで、アダプタで各社のマウントに対応することをXQと呼んだものと推測します。
TマウントはM42と同じ口径42mmですが、ネジのピッチ(M42=1mm, T=0.75mm)、とフランジバック(M42=45.64mm,
T=55mm)が違いますので、M42用のアダプタをそのまま使うことはできません。M42用のアダプタを無理やり使うために、このレンズはTマウントのネジ山が削り落してありました。T-EOSマウントアダプタをねじ込むとスカスカでしたので、接着剤で貼りつけました。このようなアダプタは500円くらいのジャンクのレンズに付いたまま売られていることがあります。もし見つけたら買っておくと便利です。私の場合、ジャンクのレンズを見るときは100%マウント金具狙いです。
2009.8.20 シネレンズ入門(8) Cooke Panchro
Vade MecumにCooke Panchroに関する長い説明があるのですが、情報が散在していたり、CoxのOpticsを参照したりするので、まとめるのはなかなか大変です。Panchroが名前の一部に含まれるレンズを列挙すると次のようになります。
### 35mm cine用の普通のSpeed Panchro
Speed Panchro f2.0 24mm-108mm 35mm cine (Motion Picture Sound Format 16.03x22.04mm)
Panchro II f1.7/18mm, f1.8/25mm, f2/32mm-75mm (Motion Picture Silent Format
18.37x24.89mm をカバーする)
Panchro III
ちなみに、Speed PanchroはOpicと同じ4群6枚の普通のダブルガウス型ですが、Panchro
IIは18mmと25mmが7群9枚、32mmと40mmと50mmが5群7枚、75mmが4群6枚だそうです。
### 35mm cine用のひと絞り明るいタイプ。
Super Speed Panchro f1.3 一番後ろのレンズを分割したLeitz Xenon 1.5/50mmと同じタイプ、一部にErnostar型のレンズも含まれる
Special Speed Panchro f1.3 60mm
### イメージサークルが大きいタイプ。
Double Speed Panchro f2 40mm, 50mm 24mm x 36mm
Deep Field Panchro f2.5 4in-6in 24mm x 36mm
### 望遠タイプ
TelePanchro 6in - 22in
要点としては、Super Speed Panchroはひと絞り明るく、Double Speed Panchroはイメージサークルが2倍だということです。Deep
Field Panchroは、推測ではありますが、Speed Panchro f2/108mmが大きすぎてArriflexのローレットに入らないので、f2.5にして小型化したのだと思います。
2009.8.19 シネレンズ入門(7) Cooke Opic
Vade MecumにOpicからSpeed Panchroに移行する時の話が出ていましたので要約します。
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TTH社では、第一次世界大戦直後からf3.1 Cinema Seriesレンズで映画用のレンズを生産した。1920年にH.W
LeeがOPIC F2を開発する。OPICはオリジナルのガウス型レンズとツアイスのプラナーを元に開発され、近代的な高速ガウスレンズの基本特許を取得した。1920年代にツアイスのメルテがビオター
f1.4を、シュナーダーのトロニエがクセノンを開発するが、TTHが基本特許を持っている。
初期には60インチ、8インチ、6インチなどの大きなレンズが作ったが重すぎた。あまり需要はなく、販売は低調。後にWrayに移ったWynne博士の話では、Opic
6inchはTTHの設計部門で文鎮として使われていたそうだ。
1930年代になって小型カメラが登場すると、小型の明るいレンズの需要が発生し、TTHはOPICの設計のライセンスを供与した。(ライツ・クセノンが有名)
もうひとつのチャンスは1928年に開発されたサウンド・ピクチャーであった。無声映画ではスタジオ内でアーク灯照明を使用した。しかし、アーク灯は騒音が大きく、暗いタングステン電球に取り換えられた。ここにTTHの明るくてシャープなレンズの需要が発生した。第一次世界大戦後、ハリウッド映画界はドイツに偏見を持ったので、ツアイスのBiotar
f1.4は売れなかった。
Wilfred Taylorがハリウッドに営業に行き、需要を確認した。このシリーズをPanchroという名前で売り出したところ、ハリウッドの支持を得ることに成功し、1930年以降のほとんどすべての映画がPanchroレンズで撮影された。
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やっぱりOpicとSpeed Panchroは同じもののようですね。アーク灯の騒音が大きくてトーキー映画に使えなかったのと、ハリウッドのドイツに対する偏見が成功の要因だったとは初めて知りました。
2009.8.18 シネレンズ入門(6) Cooke Speed Panchro (3)
シネレンズ入門(2) Cooke Speed Panchroで、Opicとスピードパンクロの違いはコーティングではないか、と書いたのですが、Vade
Mecumに次のような記述がありました。どうやら1944年頃、Speed Panchroになってからコーティングが始まったそうです。Vade
Mecumを要約すると次のようになります。
Cooke Speed Panchro f2.0 75mmには、二次世界大戦後イギリス軍から払い下げられたムービーカメラについていた黒塗りの物があり、"War
Finish"と呼ばれる。以下の製造番号のレンズの前玉の曲率は同じであるがコーティングが違う。
284,15x (uncoated)
284,77x (coated pale blue)
311,36x (with ELC coating)
多くのELCコーティングタイプのレンズがCooke and PerkinによりM39x26(ライカスクリューのこと?)に改造された。TTHのより1944年から、少なくともDeep
Field Panchro用には、コーティングが導入された。
これは微妙な製造番号ですね。うちにあるのは282574なのですが、coated pale
blueのように見えます。uncoated, pale blue, ELCの3本を並べてカラー写真を撮って、見分け方を解説したいものです。まあ、少なくとも一本はuncoatedのSpeed
Panchroがあることは確かですので、Opicとの違いがコーティングでないことは確かのようです。ということで、私の仮説はあっさりと否定されてしまったのですが、3種のコーティングのレンズを並べるという新たな目標ができたのでした。
2009.8.17 謎のレンズメーカー(11) Carl Meyer
Vade MecumにCarl Meyerの記事がありましたので、紹介します。Carl MeyerとはシカゴのBurke
& James Photographic Coのレンズに付けられた商標のことで、George Druckerが1927年に命名。メーカー不詳で"Made
in the USA"と書かれたレンズを販売。
明らかにCarl ZeissとHugo Meyerを混ぜた名前ですね。かなり安っぽい感じの名前ではありますが、分かりやすいのは確かです。名前を批判するのは簡単なんのですが、いざ自分の会社のレンズに名前をつけろと言われると、結構困るのではないでしょうか。高性能っぽくて、由緒正しいような名前がいいですね。コシナさんはうまいこと昔の名前を使ってますね。Distagon,
Tele-Tessar, Planar, Biogon, Sonnar, Nokton, Skopar, Ultron, Helliar, Apo-Lanthar。なかなかすごいラインアップです。
さて、Carl Meyerのレンズには次のようなものがあります。(暗いレンズは少し省略しました)
### 35mm movie lens
Moviar f2.0-5.6 25mm-500mm
Videostigmat f2.9-5.6 200mm-400mm
### 16mm movie lens
Speed f0.85 150mm
Speed f0.95 25mm
Speed f1.0 37.5mm
Speed f1.1 90mm
Speed f1.5 25mm-140mm
Speed f2.0-f2.8
Videox f1.5 12.5mm
Reprostigmat f1.4 90mm
Reprostigmat f3.5-f9.0
Apochromat f6.8
Telephoto f4.5-f5.6 250mm-600mm
Triplet f5.0 700mm
Speed 0.95/25mmの作例がkinoplasmat亀吉さんの”滲みレンズ”にありますので、リンクさせていただきました。
2009.8.16 謎のレンズメーカー(10) Leitmeyr 2
Vade Mecumはイギリスの資料(雑誌広告など、一部アメリカの資料も使っているようです)をもとに書かれているので、イギリスで販売または宣伝しなかったレンズメーカーの記載は少なくなります。Leitmeyrはドイツのミュンヘンの会社ですが、イギリスでは販売しなかったようでして、ほとんど情報はありません。次のようなレンズが出ています。
Leitmeyr f6.8 65-108mm
Satyr (1926 Dialyt type)
Sytar f3.2-f6.3 (Doppel Anastigmat)
2009.8.15 Celor 4.8/6in 再改造
キングズレークの"写真レンズの歴史"にはGorerz Celorについて次のような記載があります。
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フォン・フーフ設計による最初のレンズは1899年に、ダブル・アナスチグマット・ゲルツB型として発表され、2種類の明るさで作られた。シリーズ1bのF4.5とシリーズ1cのF6.3である。1904年に、すべてのゲルツのレンズの名称が変更になり、B型はシリーズ1bがツェロー(Celor)に、シリーズ1cがシントール(Syntor)に変わった。
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たくさん作られたレンズなので、簡単に買えるはずなのですが、焦点距離の短いのはなかなかありません。たまたま安く見つけた4.8/6inですが、これでも焦点距離が長すぎてお蔵入りしていました。そこで、少しきれいに再改造してみることにしました。
参考のため、Vade Mecumを見ると、キングズレークの本より詳しく出ていました。それによりますと、
Series 1b Celor f4.5, f4.0, f3.5(Movie?), f4.8, f5.0, f5.5 60mm-480mm
Series 1c Celor f6.3, 9-27cm
Series 1d Syntor f6.3, f6.8 4.75-12in
Celor(セロール、ツェロー)には1b f4.5と1c f6.3があったのだそうです。
これはCelorに改名直後のSeries 1bです。
座金がありますので、これを少し削って57mmの中間リングに叩き込みます。以上で改造終了。少しきつめに作って、万力で思い切り締めあげれば、二度と抜けません。
ヘリコイド(52mm)、アダプタ(52mm<---57mm)、今回作った金具(57mm<---52mm強)、レンズ(52mm強)、これらをねじ込んで組み立てます。
オリジナルの座金を使ったほうが派手でいいですね。
完成図。結構無駄の多い作りですが、前よりはずいぶん小さくなりました。
前はこんなに大きかったんですから、って、これペンタ67用の改造ですね。結局ペンタ67では一回も使わず再改造した、ということに今頃気づきました。
2009.8.14 謎のレンズメーカー(9) Rietzschel 2
Vade MecumにRietzschelのことが6ページにわたって記載されています。イギリスであまり有名でないそうです。要約します。
1896年頃創業の老舗。カメラとレンズを製造販売した。1920年代までは堅実な商売をしたが、その後(1926?)Agfaに吸収された。(Camerapediaには、1921年BayerまたはLeverkusenに買収され、さらに1925年にAgfaに買収されたと書いてあります。)
Agfaはヨーロッパ大陸で大判レンズを売るとき、Rietzschelの名前を長い間使った。Rietzschellはイギリスでレンズを直販したことはなく、知名度が低い。
次のようなレンズがあります。
Periscop
Extra Rapid Aplanat f8
Rietzschel Anastigmat f8-f9 (1903)
Rectigraphique f8
Portrait f3.2-f3.8
Linear Type A f4.5-f4.8 1.675-16.5in
Linear Type B f5.5-f6.0
Linear Type C f6.3-f7.0 (1898)
Linear Type D f6.8
Doppel Anastigmat f6.3-f6.8
ReproLinear Process lens f11
Apolinear
Apotar f6.3-f6.8
Baryt Anastigmat f6.8-f7.7
Dialyt f4.5-f6.8
Telelinear
Apostigmat Wide Angle f25
Trilinear f6.3-f7.5 (Triplet)
Prolinear f1.9 135mm for Mentor 6x9 reflex camera (1927) (Speedic type)
Solinear f4.5 105mm, 120mm (1910)
Linear Type Cはキングズレークの本にも出ています。図6.14 (b) に出ているもので、4枚張り合わせで-+-+の構成です。大口径レンズは、Prolinear f1.9 135mm一種類しかないようです。Camerapediaを見ると、Linear f4.5も4枚貼り合わせのダブル・アナスチグマットのようです。
2009.8.13 謎のレンズメーカー(8) Kenngott 2
Kenngott社はVade Mecumでは、"n"がひとつのKengottという綴りで出ています。ドイツのシュトゥットガルトのW.Kengott社と、フランスのパリのP.
Kengot社があるようです。
シュトゥットガルトのW.Kengott社については、次のような簡単な説明があるだけです。
W.Kengott, Eugenstrasse 4, Stuttgart, Germany.
各種のカメラとレンズを在庫した。Vinco 3x4カメラ用のVidar f2.9, f4.9/5cmレンズがある。Vidanarレンズを含むアイテムはBaldaカメラ用である。
フランスのパリのP. Kengot社については、もう少し詳しい説明があります。
Kengott, P. Paris, France.
イギリスでもP. Kengot銘で広告が出ている。Centuryカメラ用の"leaf"レンズも供給していたと思われる。1906年にLe
Prismacというステレオカメラ用にRRレンズを供給。次のようなレンズがある。
Medio Anastigmat f6.8-f7.7 (Zeiss Anastigmat, 1905年にツアイスの特許が切れてから製造?)
Simili f7.7 (Anastigmat)
Anon f7.7 (Ganziniカメラ用。Anonというのは色々な会社から出ています。不思議です。)
Euryscope f6.0 (Euryscopeも色々な会社から出ています)
2009.8.12 ROSS WIDE ANGLE XPRES再改造
ずっとお蔵入りしていたROSS WIDE ANGLE XPRESをCheckie氏にもらった香港製ヘリコイド用に再改造してみました。なかなかきれいなレンズなので、以前よりは少し外観重視にしてみました。
外観はXPRES 1.9/75mmによく似た金ぴかのレンズです。このレンズはオルソメタやザッツプラズマットと同じ型なのですが、全く不人気です。きれいな物でも安いです。
このような金具を作れば改造完了です。以前改造に使ったのと同じ約44mmのスクリューを使用。ミランダの中間リングのスクリューより、わずかに太い。これを適当に太さ調整して52mmのニコンの中間リングに接着すれば改造完了です。今回の太さ長生には薄い革を使用しました。合成ゴム系接着剤が大変よく効きます。
ヘリコイドに今回制作した金具をねじ込んで、そこにレンズをねじ込みます。
ねじ込むと、こんな感じです。
以前よりかなりスマートになりました。
2009.8.11 謎のレンズメーカー(7) Wray 2
Vade mecumではWrayについて28ページにわたる記載があります。雑誌広告などの資料が豊富にあるようで、細かいです。
1850年頃創業。イギリスのタルボットがカロタイプの実用化に成功したのと同じ年とのことだが、ちょっと怪しい。フランスのプランカール=エヴレールがタルボットに無断でカロタイプの印画紙(ソルテッド・ペーパー)を改良したのが1847年なので、そのことを言っているのかもしれない。プランカール=エヴレールは特許料を支払っていなかったので、タルボットが訴えを起こしたが敗れ、フランスで改良されたカロタイプ(フレンチ・カロタイプ)が一気に広がる。イギリスではこれもタルボットの功績とみなしている模様。1880年代からラピッド・レクチリニア(RR)およびペッツバール型のポートレンズの製造を始める。円形虹彩絞り付き。1891年からイエナのガラスを使い始める。19世紀末にWray氏が亡くなると、次第に生産が減り、1908年、元RossのA.A.
Smith氏に会社を譲渡。第二次世界大戦が終わると復活。イギリス国防省や民生品の注文が多くなり、忙しくなる。1943年にTTHからWrayに移ったC.G.
Wynne氏がコンピュータを使って次々に新しいレンズを設計する。1950年Wrayflex発売。
### 初期のレンズ:
Meniscus Lenses (1886)
Wide ANgle Landscape (1889)
Rapid Rectilinear Lenses f5.6-f8
Casket Lenses (1889)
Platstigmat f8.0 3-16in (1901)
### 1908年以降:
Studio Lenses f4.5 (Petzval)
Soft Focus f2.5-f5.0 (Petzval, 1928)
Lustrar f2.5, 2.8, 3.0, 3.2, 3.5, 4.5, 5.9, 6.3, 8.0, 10.0
Lustrar Short Focus f5.0
Process Lustrar f10
Cine Lustrar f1.5, 2.5, 4.5
Super Enlarging f3.5-f4.5
Universal Anastigmat f6.8-f7.7
ApoProcess Lustrar f10
Casket Anastigmat f5.6-f8
Wide Angle Anastigmat f16
Turtle Variable Focus f5.0
Diffused Image f4.0
Plustar Tele f4.5-f6.3
Farvu Telephoto f10
### 1939年以降
Lustrar f2.8-f6.3
Supar f3.5-f4.5 (Triplet)
Plustrar f3.5-f4.5
### In WW2:
Big Bertha f4.-0f6.3 (Telephoto)
Wide Angle Lustrar
### After WW2:
Copying F1.9 100mm (CRT lens)
Copying f1.0 2in (Unilite + a doublet at the front)
Copying F4.0
Cine Radiography f0.71 50mm, 64mm (7-glass Petzval derivative)
Cine Radiography f1.4 100mm
Lustrar f3.5-f4.8
Lustrar f2.8 (Speedic?)
Apo Process Lustrar f10
Unilite f4.5/135mm
Unilite f2.0 35mm, 50mm, 75mm, 108mm, 140mm (1946) 長いほうは確認されていない
Cine Unilite f1.9 25mm, 35mm, 50mm, 70mm, 100mm
Cine Unilite f2.0 35mm
Tricolour Lenses f2.0 35mm, 50mm, 75mm, 100mm
Unilux f2.8 50mm for Wrayflex
Architron f3.5 for Paxette
Aerial Wide Angle f5.6
Wide Angle Anastigmat f6.3
Wray-Pullin f4.5
残念ながらUnilite f2.0の長いレンズ(多分75mm以上)は確認されていないそうですが、Cine
Unilite 75mm, 100mmとTricolour lens f2 75mm, 100mmがあることが分かったのが収穫です。
2009.8.10 謎のレンズメーカー(6) Perken 2
Vade mecumではPerken社について3ージにわたる記載があります。
イギリスでは一般的なメーカー。1880年まではPerken Son and Rayment、1900年から1914年にはPerken
Son and Co.という商標を用いた。レンズの外観と刻印がすばらしく、光学的には保守的である。部品として供給されたレンズには、"Optimus"とだけ刻印され、メーカー名のないものもある。どういうわけかフォクトレンダーの商標であるEuryscopeという名前のレンズを販売している。これはイエナのガラスを使ったラピッド・レクチリニアであるが、ドイツから輸入したものかイギリスで作ったものかは不明である。
ラピッド・レクチリニア・レンズを豪華な装飾をほどこした真鍮の筒に入れて、世界中のイギリスの植民地に送り出したメーカーのようです。
次のようなレンズがあります。
Optimus Rapid Euryscope f6.0
RR Euryscope f7.7
Eurygraphe f8.0
Optimus Wide Angle Euryscop f9.5
Optimus RR f8.0
Optimus Wide Angle Symmetrical f16
Optimus Quick Acting Portrait f4.0
Grosser enlarging lens f5.75
Optimus Multifocal Projection
Optimus Rapid Landscape f11
2008.8.9 謎のレンズメーカー(5) R&J Beck 2
Vade mecumではR&J Beck社について18ページにわたる詳細な記載があります。さすがイギリスの本ですね。要約します。
1843年創業であるが、写真レンズを作り始めるのは1880年代から。製品は主にアメリカで販売。1890年代にはイエナのガラスを使ったようである。1900-1910年のレンズはThornton-Pickardなど他社の刻印をしたものが多い。ミュンヘンのシュタインハイルからアナスチグマットの製造権を得て、OrthostigmatとUnofocalを製造。これらにはSteinheil-Beck刻印される。Steinheilはドイツ国内では特許係争があり、製造に支障があったのでイギリスのBeckに製造委託した。Beckは虹彩絞り(iris
diaphram)のパイオニアでもある。1907年頃に独自設計のIsostigmarを製造する。1923年、最初の魚眼レンズであるHill
Cloud Lensを製造する。 1960年、J.J. Griffin and Sonsにより買収される。
Neostigmarは4群4枚のスピーディックタイプなのですが、3枚目または4枚目を取り除くことにより、焦点距離が変えられるようです。たとえば、Series
1 No3レンズは4.75inなのですが、4枚目を抜くと9.5in、3枚目を抜くと7.5inになるそうです。これは初めて知りましたが、興味深いですね。
以下にレンズの名前を列挙します。たくさんありますので、少し省略しています。
Rapid Rectilinear類
Autograph Wide Angle/Rectilinear/Portrait 3-29in (1888-)
Beck Portrait Lens f3.0-f6.0 6-24in (Petzval)
Symmetrical f8 (Ensign and Thornton Pickard labels)
Double Aplanat Casket Set / Convertible Double Aplanat (1911)
Biplanat f5.8
Orthostigmat 類 (1896-)
Orthostigmat Series 1 f6.3-f8 / 11 f6.8-f7.7 / 111 f10 / 1V f12 / C(wide
angle) / X (Dagor type)
Unofokal Series 1 f6 / 11 f4.5
Bystigmar Series 1/11/(convertible Osthostigmat)
Isostigmar類(1907-1922)
Isostigmar Series 0 f3.5 / 1 f4.5 / 1a f6.4-f6.5 / 11 f5.8-f6.3 / 111 f7.7
/ 1V f6.3-f6.5 / V f11 / V1 f5.6 /
Neostigmar類 (1914, 4 element speedic type which the third element can
be removed to change focal length)
Mutar (early version of Neostigmar)
Neostigmar Series 1 f4.5 / 11 f6.0 / 111 f7.7 / 11n f6.0 / 111n f7.7 /
V111n f7.7 / Cine f3.5
ヒルのスカイ・レンズ
Hill Cloud Lens (1923-1939)
その他
Beck Anastigmat f6.3 (triplet)
Enlarger Lenses f4.5
Apochromatic f10 (process lens)
2008.8.8 徳川慶喜のカメラ
意表を突く大政奉還をして政権を担う準備のない朝廷に「これまでどおり政権を担当してほしい」と言わせたり、大阪に行政府を置き上院・下院議会を設置し天皇を象徴とする「大君」制国家構想を持ったり、朝廷に王政復古の取り消しを求める書を送ったり、大活躍をした徳川慶喜でありますが、鳥羽・伏見の戦いにおいて新政府軍の掲げる「錦の御旗」の前に敗北してしまいます。明治維新の後、慶喜は32歳の若さで静岡に隠居し、30年にわたり隠居生活をを送ります。政治の世界からは一切身を引き、趣味に没頭します。「その時時代が動いた 7」(NHK取材班編、KTC中央出版)から引用します。
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しかし、趣味の中でも熱中したのは、西洋の新しい技術、カメラである。久能山東照宮博物館に、慶喜の使っていたカメラが収蔵されている。アメリカ・コダック社のパノラマ・カメラ、ドイツ・ゴルツ社のプレモカメラなど1900年代初頭のもので、こうした写真好きは父斉昭の影響を受けている。斉昭は嘉永三年(1850)ごろから写真術の研究をはじめているが、そうした好奇心旺盛のところはそっくり受け継いでいるといえる。
本格的に写真を撮りだしたのは、明治二六年(1893)ごろといわれる。徳田孝吉という写真家から手ほどきを受けたという。慶喜はカメラのレンズを通して、新しい時代を見つめていた。
撮影した写真は、確認されているだけでも二百数十枚近くにのぼる。しかし、慶喜がカメラを向けたのは、策謀渦巻く政治の世界ではなく、庶民の生活であった。そこで生まれた庶民との交流は、慶喜にとって、心安らぐものだったかもしれない。
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しかしながら、Wikipediaの徳川慶喜の項目を見ると、まだ先があったようです。1897年東京巣鴨に引っ越し。1902年公爵として貴族院議員就任。1910年議員をやめ隠居。再び趣味に没頭。大正2年(1913年)死去。徳川歴代将軍の中で最長寿。
ひょっとしたら、ザロモンの20年以上前に貴族院のキャンディッド・フォトを撮っていたかもしれません。また、ひょっとしたらツアイスやテーラーホブソンにレンズを特注していたかもしれません。
2009.8.7 イギリスのレンズメーカー概要
Vade mecumには、個別のレンズメーカー以外にも、"British Lenses"とか"French
Lenses"とかいう項目があって、各国の概要を知ることができます。Vade
mecumの"British Lenses"の項目を要約します。
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イギリスはフランスと同様に写真出現当初は主導的な役割を果たした。しかし、フランスで発明されたダゲレオタイプに比べて、イギリスで発明されたカロタイプは当初営業的には成功しなかったため、レンズの開発に興味を示すメーカーは少なかった。なので、イギリスのカメラメーカーはRossのレンズを使うか、レンズを輸入するしかなかった。カロタイプと同じネガ・ポジ・プロセスである湿板や乾板が発達すると、Dallmeyer,
Grubb, Wray, Beck, Crouch, Perken, Teylor-Hobsonなどがレンズ製造に参入した。Dallmeyerは1860年代にRapid
Rectilinearを開発し、1890年代に望遠レンズを開発した。
1890年代になると他の国より早くアナスチグマット時代に入り、CookeのTaylorが画期的なトリプレットを開発し、DallmeyerのAldisがStigmaticを開発した。RossはZeissのアナスチグマットをライセンス生産し、BeckはSteinheilのOrthostigmatとUnofokalのライセンス生産や独自のIsostigmarの生産をした。しかし、光学ガラスをショットに依存していたため、第一次世界大戦では生産に支障がでた。そこで、Taylor
Hobson社はショットのガラスを使わないAviarなどを設計した。
第一次世界大戦が終わると、ドイツからべらぼうに安いレンズが入ってきたので、英国のメーカーは打撃を受けた。その後は、映画用などの高級レンズを主に生産した。
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イギリス人のプライドが見える記述ですね。現代の写真の基礎であるネガ・ポジ・プロセスはイギリスが発明したカロタイプにある。つまり、現代の写真術はイギリスが発明したものである。ラピッドレクチリニアや、クックのトリプレットなど、レンズの重要な変革はイギリスで起こった。つまり、現代のレンズの基礎はイギリスが築いたものである。しかし、戦争に負けたドイツや日本が安物のレンズを輸出したため、イギリスのレンズ産業は衰退してしまったではないか、どないしてくれんねん。というふうに読めるのは気のせいでしょうか。
2009.8.6 謎のレンズメーカー(4) Watson 2
Vade mecumではWatsonについて7ページにわたって記載があります。さすがにイギリスの本だけありますね。ちょっと要約してみます。
ワトソン社は1837創業。顕微鏡の分野において高名なメーカー。1860年代より精密な木製カメラを製造。その後、ラピッドレクチリニアレンズの製造を開始。1902年からワトソンに勤めだしたConrady教授が設計したHolostigmatレンズで大きな成功を収める。Holostigmatは反転ダゴール型でして、Conrady教授が1901年に設計したと書いてあります。あれぇ、さっきはConrady教授は1902年からと書いてありましたので、ちょっと矛盾しますね。ちなみにキングズレークの本によると、Holostigmatは1905年の設計になっています。Conrady教授は、ツアイスのAnastigmat
VII類よりも先にHolostigmatを設計したと主張しているような雰囲気ですが、ルドルフがVII類のを設計したのは1894年ですので、ちょっと無理があるような気がします。それに、なぜ同じ3枚貼り合わせの1892年設計のDagorやZeiss
Anastigmat VI類と比較しないのか不思議です。Dagorの特許は反転型(つまりHolostigmatの型)を含むとキングズレークの本には書いてあります。
多分1940年代だと思いますが、テーラーホブソン社からHopkins氏がやってきて、f1.9/3in、t2.1/4in、TV
Zoom lensなどを設計します。戦後の1947年に新しいレンズのシリーズを出すことを予告しますが、結局果たせなかったようです。その後は写真用のレンズの製造をやめてしまったようです。t2.1/4inがあるというのが分かっただけでも大収穫です。大いに興味があります。
Watsonのレンズには次のようなものがあるそうです。
1889年のリスト
- Portrait Lens
- Wide Angle Single Landscape
- Watson's Repid Rectilinear f8
- Watson's Premier Lens f6-f8 (Rapid Rectilinear)
- Watson's Wide Angle Rectilinear f16
1901年から
- Holostigmat Convertible Series 1 f6.1-f6.5
- Holostigmat Series I f6.0
- Holostigmat Series II f8.0-f8.7
- Holostigmat Series III f9.5
- Wide Angle Holostigmat f11
- Casket sets & sets
その他
- Kinora f3.5 (Holostigmat type for cine)
- Testa f6.5 (triplet?)
- high speed f1.9 3inch
- high speed t2.1 4inch
- TV Zoom
2009.8.5 謎のレンズメーカー(3) Laack 2
Vade mecumではLaackについて6ページにわたって記載があります。でも、やっぱり、あまり良く分からないようです。要約すると、
- 1934年に50周年記念の記事があるので、創業は1884年と推定される。
- 第一次世界大戦前は主にアプラナットを作っていたようでるが、イギリスでは知られていない。
- 1930年代には多くの種類のレンズの広告を出しているが、イギリスでは一般的なレンズではない。売り出そうとしたところで、戦争になってしまい、果たせなかったのではないか。
- Rathenowはベルリンの西70kmの東ドイツにあり、戦後どうなったか分からない。
いずれにしろ、イギリスとはあまり縁の無いメーカーだったようです。Laackには次のようなレンズがあると書かれています。
- Atelier Schnell arbeiter (Petzval)
- Polynar (RR)
- Doppel Polynar f4.5-f6.3
- Persor Aplanat F11
- Polyplan f7.2
- Extra Rapid Aplanat f7.7
- Wide Angle Aplanat f18
- Dispar
- Pololyt f3.5-f4.5
- Cine Pololyt f2.0-f2.3 (Petzval)
- Dialytar f2.7-f6.3 (Triplet or Tessar type)
- Dialytar Wide Angle f6.3-f8.7 (4-Gauss)
- Polyxentar f4.5-f6.8 (Dagor? or modified Celor? type)
- Polyxentar (Petzcval) f1.3-f2.0 12.5mm-25mm
- Polyxentar f9.0 process lens
- Pololyt f2.9-f4.5 (lower price series)
- Anon f1.9-f6.3 (Triplet)
- Ragolyt f4.5 60mm for Karmaflex
- Regulyt f4.5-f6.3 (Triplet)
- Teleanastigmat f6.3
- Enlarging Lenses f3.5-f6.3
- Texon f3.5-f4.5 (Enlarging)
- Projection Kino I/II f1.6-f2.3 (Petzval)
- Projection Anastigmat f2.8-f3.0 (triplet)
- Definar f4.5-f6.3 (Triplet)
- Heleston f1.6-f2.3 (Petzval)
- Vorsatz (tele-converter, close-up lenses)
- Tegonar f3.5 35mm for Neidig Perlux camera about 1950
2009.8.4 テーラー・ホブソンの設計者たち
Vade mecumにテーラー・ホブソン社の設計者についての解説がありました。面白かったので、簡単に紹介します。イギリスの本だけあって、テーラー・ホブソン社の説明は詳しいです。779ページから846ページまでですから、
なんと68ページにわたります。
第二次世界大戦が近づくと、テーラー・ホブソン社のレンズ設計量が減ったようでして、H.W.
Lee氏は退職します。(キングズレークの本では1936年になっています) H.W.
Lee氏はその後、スコフォニー社、パリン社、アルディス社に移ります。
この日誌でも何度か引用させて頂いた、"Photographic Optics"という本の著者として有名なA.
Cox氏もテーラー・ホブソンの設計者だったようです。A. Cox氏は後にアメリカのBell&Howellに移ります。Bell&HowellはTaylor
Hobsonのレンズをたくさん使っているので関係が深かったのでしょう。
1944年にWrayでUnilite F2を設計したC. Wynne氏もテーラー・ホブソンの出身です。UniliteまはたCine
Uniliteを探しているのですが、50mmより長いのは見たことがありません。残念ながら、この本にも「50mm以上のは見たことがない」、というようなことが書いてありました。Unilite
4.5/135mmというのを初めて知りましたが、これが特に高性能らしいです。
Watson社でズームレンズを設計したH. Hopkins氏もテーラー・ホブソンの出身だそうです。Watsonのf1.9/3inを設計したのも、H.
Hopkins氏の可能性が高いようです。
数多くの設計者を輩出し、精密なレンズを製作したテーラー・ホブソン社には、イギリスの技術者魂のようなものを感じます。しかし一方では、大英帝国経済の衰退から逃れることができなかったことも、確かなようです。
2009.8.3 謎のレンズメーカー(2) Krauss 2
かなり大々的にツアイズのライセンス生産をしていたようです。ツアイズは元々イエナのガラスを売るために、レンズの設計を始めたわけですから、外国企業にライセンス生産をしてもらうのに積極的だったのでしょう。山崎光七氏がツアイスからテッサーのガラスを送ってもらえたのも、このツアイスの方針があったせいだと思います。
ツアイス特許のレンズは次のようなものを生産していました。ほぼ全部ですね。
Zeiss Anastigmat/Protar Series II/IIa/IIIa/IV/V/VII
Zeiss Unar F4.5-F5.0
Zeiss Planar F3.6-F4.5
Zeiss Tessar F2.7-F6.3
Zeiss Apo-Tessar F10
ツアイス特許以外のレンズには次のようなものがあります。
Quatryl F2.7-F4.5 (Tessar ?)
Trianar F3.0-F6.3 (Triplet)
Roller Anastigmat F4.5
Kalloptal F7.7
Krauss Rexyl F1.8 25mm for 16mm cine
2009.8.2 謎のレンズメーカー(1) HERMAGIS 2
せっかくVade mecum(英語ではベイディーミーカムと読むようです。語源はラテン語"go
with me"の意)を買ったので、”謎のレンズメーカ”の謎を解いてみたいと思います。まずはHERMAGISから。
1860年頃からペッツバール型のポートレートレンズを製造していた老舗です。1880年代には、ラピッドレクチリニア型のレンズも作っていたようです。1902年または1898年からAnastigmatを作っていたそうですので、ドイツのメーカーと何らかの関係があったようですが、はっきりしません。Aplanastigmatは1900年頃から作られたダゴールまたはコリニア型のレンズのようですので、ドイツで設計されたレンズをすぐに作っている感じですね。うちにあるHermagis
Anastigmat 4.5/210mmも記載されていますが、レンズの型は書かれていません。
Hermagis社は後にSOM-Berthiotと合併したそうですが、詳細は分からないそうです。年代特定の参考になる資料はありません。レンズの型やシャッターから推測するよりなさそうです。主要なレンズ名とその型(怪しいですが)を書き出します。
Portrait Series I(F3.4-F4.2)/II(F2.7-F4.2) (Petzval)
Rapid Rectiliniar (Rapid Rectiliniar)
L' Eidoscop F4.0-F5.0 (Rapid Rectilinear, Soft focus ?)
Aplanastigmat F6.8 (Dagor or Kollinear)
Dellor Anastigmat (Gauss-4)
Hermagis Anastigmat F4.5 (???, mine is a copy of Planar 4.5)
Lynx F3.5 (???)
Dellynx F3.5 (Triplet ?)
Perlynx F1.9-F2.5 for Cine (Speedic)
Luxar F2.2 for projection (???, mine is Petzval)
まあ、要するに、いろいろな型のレンズを作っているが、ちゃんとした資料はないということです。買ってみて、分解してみて、何が出るかお楽しみのメーカーということです。
2009.8.1 Vade mecum購入
以前から気になっていた"A Lens Collector's Vade mecum"(Alex Neil Wright, David Mathews Associates)ですが、kinoplasmat亀吉さんの推薦もあり、ついに購入しました。直訳すると、「レンズ・コレクターの必携参考書」です。antiquecameras.netで買えます。CD版はアメリカ国内のみの出荷ということなので、ダウンロード版にしました。価格は14.99米ドル、本日のレートで1,462円。この手の本にしては良心的ですね。アマゾンでも買えるようですが、値段が高いし、現在品切れとのことでしたので、やめました。
データ量は340KBほどで、20分ほどでダウンロードできました。フォーマットはPDFです。1999年版と、2001年版を合わせて1,600ページほどありました。
内容はレンズメーカー毎の解説で、ABC順に並んでいます。英語の書籍ですが、割と読みやすいです。今後引用する機会が増えると思います。
2009.7.58 Kino Plasmat 1.5/90mm 再改造
しばらく貸し出し中だったKino Plasmat 1.5/90mmが返ってきました。よく見ると、昔作った暫定EOSマウントには問題が多いので、作り直すことにしました。改良点は次の通り。
1. EOSマウントが接着剤でとめてあるだけなので、落下の危険性があった。ビス4本に変更し解決。
2. レンズヘッドが取り外せなかった。オリジナルのフランジ金具を使用し、いつでも取り外せるようにした。これで、スピグラなど別のカメラにも簡単に取り付けられます。
3. 外観が汚く貧相。真鍮に黒塗りのフランジ金具を使い、昔の木製カメラの雰囲気を出す。
完成図。フランジ金具のEOSマウント金具を合計ビス7本で接続する短い筒を作ったわけです。
横から見たところ。私にしてはめずらしく、ちゃんとワッシャーをナットを使っているので、落下の危険はなくなりました。
オリジナルのフランジ金具はレンズと同じ塗装です。ビスも黒いとさらに良かったのですが、今日のところは普通のステンレズネジにしました。
本日製作したマウント金具、レンズ本体、フード。脱着可能。
製作したマウント金具を前から見たところ。フランジ金具に切り欠きがあるので、オリジナルのカメラと同じようにビス3本でとめました。
内側にネジは、ワッシャーで半分ずつひっかけて固定。まあ、こんなんでも、接着剤だけでとめるよりは、はるかに確実だと思います。
最初、EOSマウント金具と同じ大きさのドーナツ状の金具作って、裏からはさみ込もうと思ったのですが、レンズの衝突してしまうので止めました。90mmのわりにはバックフォーカスが短いので、せせこましい改造になります。
製作したマウント金具を裏から見たところ。ニコンのフードを、ネジを打つための耳のような部分を残して切断します。この耳を外側に90度折り曲げます。最初2か所穴を追加して、ビス5本で固定しようと思ったのですが、3本でも十分強度がありますしたので、やめました。なので、左側に見えるように無駄な耳が残っています。
フードに残した耳の部分を外側に折り曲げて、ドリルで穴を開けて、ビスで固定しています。折り曲げた時に少し盛り上がるので、その分を考慮して、他の面ときちっと高さが合うように折り曲げましょう。そんなに難しくないです。
2009.7.57 シネレンズ入門(5) Cooke Speed Panchro (2)
Cooke Optics LimitedのホームページにHistoryというのがあります。最近だいぶ追加されたようで、かなり詳しくなっています。1920sの項目を見ると、"1921 Cooke Speed Panchro"と書いてあります。一方、キングズレークの本では、1920年にOpic開発、1931年にSpeed
Panchro開発、と書いてあります。また、1930年代のTaylor Hobson Cooke Lensesというカタログを見ると、Opic 1 3/8inch(35mm)はKine用と書かれており、Opicが映画用に売られていたことも確かのようです。
1920sの項目には次のようにも書かれています。
The Cooke Speed Panchro lenses were a
development of the Cooke Series O lens (shown here from a 1926 product
catalog). The Series O lenses were the first to be designed with an
aperture of f/2.0.
これらのことから、Opic, Speed Panchroの類を総称してSpeed Panchroと呼んでいることが分かります。このような例は他にもあります。たとえば、Zeiss
Anastigmat Series I-Vと後のProtarをまとめてProtarと呼びますし、Doppel Anastigmat
Goerzと後のDAGORをまとめてDAGORと呼びます。
F2.0という明るいレンズが求められた理由は、映画の撮影方法の変化にあるようです。以前はアークライト照明の下で撮影が行われたので暗いレンズでもよかったのですが、自然光による撮影が増えるにつれて、明るいレンズが必要になったようです。